人の大腸内には、大よそ100兆個の500~1,000種類ほどの腸内細菌が住み着いています。腸内細菌は人の細胞数よりも多く、この菌のかたまりを腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)といい、お花畑のように見えることから「腸内フローラ」とも呼ばれています。
通常、腸内細菌叢はバランスを保ってますが、不健康な食事、ストレスや過労などの二次的な作用、又は抗生物質の摂取などの様々な要因により、腸内フローラのバランスは崩れてしまいます。
腸内フローラは複雑な腸内微生物生態系を形成しており、健康維持に重要で、バランスが崩れると大腸がんや、1型糖尿病、2型糖尿病、肥満、高血圧、炎症性疾患など、様々な疾患に関わっています。
健康に長生きしている方は、腸内細菌叢も健康で、30歳の頃とあまり変わらない状態を保っていることが分かりました。腸内細菌の多様性を維持することが、健康増進の効果をもたらすと考えられてます。
腸内フローラは、腸だけでなく全身のコンディションに影響を与えており、体内のもうひとつの臓器とも言われています。
腸内フローラの60%以上は食事などの影響を受けており、とくに「短鎖脂肪酸」の作用が大きいことが明らかになりました。
短鎖脂肪酸とは、腸内細菌がつくる、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの有機酸のことで、腸上皮細胞の重要なエネルギー源となり、抗炎症などの生理的な作用を発揮します。また、腸内を弱酸性の環境にすることで有害な菌の増殖を抑制したり、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進するといった作用もあり便秘改善に繋がります。
短鎖脂肪酸を増やすために、体内にいる腸内細菌が必要で、そのエネルギー源となるのは食物繊維やオリゴ糖です。
全粒粉や玄米といった食物繊維の豊富な「全粒穀物」を多く摂取すると、満腹感が得られやすく減量に効果的で、全身の炎症も低減させます。全粒穀物は大麦、小麦、ライ麦、オーツ麦、玄米、乾燥トウモロコシなどです。
食物繊維の多い食事を摂ることで腸内細菌の活動が高まり、多量の酪酸が作られ、炎症抑制作用のある細胞を増やしています。
全粒穀物を摂取すると腸内フローラが改善し、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が改善されます。
食物繊維が豊富に含まれる全粒穀物を食事に取り入れることが、腸内環境を改善し、健康増進に繋がり、とくに2型糖尿病や心血管疾患のリスクの高い方は必須栄養素です。
腸内環境は、血糖コントロールとも深く関わっており、血糖コントロールがずっと良好、徐々に改善する人の腸内では、腸内細菌が多くみられ、代謝や免疫といった善玉菌が多いことが判明しました。
インスリン抵抗性は、インスリンが体の中で効きにくい状態にあることを意味し、インスリン抵抗性により糖が十分に体の中に取り込まれなくなると、血糖が上昇します。肥満や運動不足などが原因ですが、腸内フローラのバランスの乱れにより慢性的な炎症が起こることもインスリン抵抗性の一因になっています。